館山リノベーションスクールはじめて物語【第1章】”開かぬなら 開けてみせよう シャッター街”
こんにちは。
「大家の学校」第2期・第3期を受講した大家の漆原秀(うるしばら・しげる)と申します。第6期では講師も務めさせていただきました。
お久しぶりの投稿です。
私の住む千葉県館山市では、2年前から官民連携の「館山リノベーションまちづくり」がスタートしています。
まもなく2021年3月5〜7日には、1年ぶり2回目となる「第2回リノベーションスクール@館山」が開催されようとしています。
元々1月に予定していましたが、コロナ禍を受け、年初に発出された緊急事態宣言を受け3月に延期となりまして、現在はオンラインでプレスクールが2回開催され、3月の開催を心待ちにしている状態です。
昨年度開催の第1回リノベーションスクールの際には、関係者の多くが準備段階から携わっていたため、その開催までの経緯を知っていたのですが、今回の第2回目となると、新規の関係者や参加者から「そもそも、なぜ館山でリノベーションスクールが開催されたのか?」を知らない人も多く、質問をされることがありました。
そこで、スクール参加者のユニットメンバーのグループ(Facebookグループ)で、開催までの経緯を小説風に紹介したところ、「気合が入った!」「ますます本番が楽しみになった」という感想をいただきまして。
リノベーションスクール自体は、2011年から始まり、現在は全国で約80市町村で開催され、参加者累計も延5千人を超えていると聞いていますが、全国には47都道府県で1,700を超える市町村があるわけですので、「自分が住むまちでもリノベーションスクールやりたいな」と思っている人は相当数いるんじゃないかな、何かのお役に立てるのでは?と思い、この度、封印していた元DIYブロガーの筆箱を開け、自分の経験をしたためさせていただきました(笑)
それでは、「館山リノベーションスクールはじめて物語」全6章でお届けます。
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【第1章】”開かぬなら 開けてみせよう シャッター街”
約5年前、私が「リノベーションまちづくり」「リノベーションスクール」というものを知った時、いつか館山でやれたらいいよなぁ、と思いはじめました。
でも心の中では、「でもまぁ館山じゃ無理だろうなぁ」「このまちに、わかってくれる人はいないんだろうなぁ」「同志なんかいないんだろうなぁ」という気持ちが9割ぐらいでした。
だって、全国でもリノベーションまちづくりに取り組んでいるのは、数十万人規模の、都道府県の代表か中堅にあたる市町村。
人口45,000人しかいない館山市、安房地域(近隣の3市1町)を含めて千葉県人口の2%に満たない地域。
予算規模が小さければ、こういった施策に予算を付けることは無理だろう、人口規模が小さければプレーヤー集めはできないだろう。
そう思っていたのでした。
2018年6月。今から3年前。
今はtu.ne.Hostelとなっている元診療所を購入し、工事の準備を始めたところで機会が訪れました。
館山駅前のビルを所有する企業グループの若手後継者が内覧会に来てくれたのです。
現在の館山リノベーションまちづくり実行委員会の副会長でもあり、今回の第2回リノベーションスクールでユニットAのローカルユニットマスターも務める本間裕二さんです。
(ちなみに連れてきてくれたのは、昨年度の第1回リノベーションスクールでローカルユニットマスターとなった白井健さんです。白井さんは現在、そのユニットメンバーと家守会社を作り、共同代表となっています。さらに白井さんとの繋がりは、かなりひょんなことでした。これはまたの機会に。)
本間さんが見学に来てくれた、その2日後にミーティングをして、空きフロアだらけになってしまった駅前ビル(通称サカモトビル)もなんとかしたいという話を聞きました。
「このまちに家守会社があるといいですね」というのが共通認識で。
「あ、このまちの次世代を担う事業者・地権者で『家守』を勉強済みの人がいたんだ!」
驚きと喜びでした。
漆原「サカモトビルの利活用について何か提案してもいいですか?」
本間さん「ぜひ!」
ワクワク。。。
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その2日後のこと。
当時、私は、「大家の学校」に通っていました。この学校の主宰者、校長こそ、後に「リノベーションスクール@館山」スクールマスターを務めていただくことになる青木純さんです。
講義の後、毎回懇親会があるのですが、そこで青木純さんに軽く相談しました。
漆原「純さん!駅前ビルの地権者から、利活用方法の提案を聞いてくれることになったんです」
青木純さん「いい!やろう!一人で考えちゃだめだ。俺も考える。よし、みんなで考えよう。館山で合宿やろう!!」
3秒で決定したのが、2018年8月に実施した「大家の臨海学校」でした。
2018年8月開催。この合宿については、こちらの記事でご覧ください。
https://localnippon.muji.com/3401/
この記事を書いてくれたのは、第1回リノベーションスクールのローカルユニットマスターである東洋平さん。
この集合写真の中には、同じくローカルユニットマスターの元沢信昭さん、実行委員会の大田聡さん、本間さんもいます。館山市雇用商工課の島本副課長も。
この突発的に決まった合宿イベントが、館山でリノベーションまちづくりが始まる大いなる伏線となったのです。
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2018年9月。
3連休中の初日。館山市雇用商工課の前課長から電話がありました。
「市長がすぐにでもお会いしたいそうです。今日でも明日でもいいので、お時間とってもらえませんか?」
翌日に市長がミナトバラックスに来られ、お会いしました。
市長「このまちは、大きな課題を抱えている。空き家、空き店舗です。あなたの活動で解消できるものなのでしょうか?」
漆原「市長は、なぜ空き家、空き店舗が増えたとお考えでしょうか?」
市長「複合的な要因だが、、で、、で、、、で」
漆原「そうですね。他にもこういう要因もあると思いますが。リノベーションまちづくりという考え方は、、で、、で、既に全国50以上の市町村で実施されています、、、、」
市長「なるほど興味深いが、どこから手を付けるかだ。長須賀はどうか?」 (長須賀-最も旧い商業エリア)
漆原「館山駅東口しかありえないと思います。過去の文脈、担っている機能、などなど、、、」
市長「東口はこれまでもあれこれやったけれど、非常に難しい、、、」
漆原「それはやり方が悪かっただけで、、、」
市長「なるほどよくわかった。では担当課と担当者を決めて検討を進めてみる」
45分ほどの会話でしたが、こうして市長へのインプットが成功。
そもそも、なぜ市長が僕の活動に興味を持ってくださったのか。
実は、市長に漆原の存在と活動をインプットしてくれたのは、tu.ne.Hostelの庭木の剪定を頼んだ60代の庭師さんでした。
庭師さん「あんたすごいことやってんねー。市長には会ったのけ? 俺さ、実は市長さんのご自宅のお庭やらせてもらっててさ、あなたに会うようにって言っとくからさ」
このやりとりの1週間後に、市長から会いたいとの連絡があったのです。
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こうして市役所の担当課と担当者が決定しました。
現在もリノベーションまちづくりの行政側の主管を務めていただいている島本副課長です。
島本さんといえば、会話のたびに「市には予算がないので・・・」と前置きする方という印象を持っていて、大丈夫なんだろうか、というのが当時の正直な感想でした。
(「第2章」につづく)