2020.05.07

場づくりの担い手である大家7人が考える“家”とは?「大家の学校 ホームルーム」イベントレポート〈前編〉

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新型コロナウイルス感染症の影響により、大家や場づくりに関わる人たちの身の回りにも変化が生じていることを受けて、愛ある場づくりの担い手を育てる「大家の学校」のスピンオフ「大家の学校 ホームルーム」を2020年5月1日に開催。今の状況や考えを共有して、同じ立場の人たち同士の気持ちを少しでも軽く、少しでも未来に向けたアクションに繋げられたらと企画しました。

 

登壇するパネリストは、大家の学校の講師の中から株式会社アンディート 安藤勝信さん、マイクロデベロッパー 漆原秀さん、株式会社HandiHouse project 加藤渓一さん、有限会社仙六屋 茨田禎之さん、山田荘 山田春江さん、合同会社巻組 渡邊享子さん。そして、モデレーターとして校長の青木純さんを含めた、7名のトークセッションです。

 

自分の場を持つそれぞれの視点からお話しいただき、濃厚な90分となりました。このイベントレポートでは、トークセッションの内容を抜粋して前編・後編に分けてお届けします。

 

◎大家の学校とは
場づくりと関係性のデザインの学び舎として2016年に開校。これまでに6期実施し、延べ171名が卒業。54名の講師が、5年、10年かけて培ってきた場づくりのノウハウを講義とトークセッションを通してレクチャーします。講師と受講生は大家だけでなく、飲食、宿、不動産、建築、メディアの方々など業種はさまざま。
現在、第7期の受講生を募集中。詳細はこちら

 

 

これからの“家”は、ハンデが武器に、引き算より足し算になっていく

 

「8時だョ!全員集合」という掛け声から始まった、大家の学校ホームルーム。

参加者は、全国各地から234名の方にお申込みいただきました。パネリストは、東京・千葉・京都・宮城から。オンラインだからこそ距離を飛び越えて、お集まりいただきました。

 

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トークセッションのスタートとして、青木さんから“家”について問題提起がありました。

 

青木さん
大家の学校は、家というものを住む人と一緒につくり、暮らしの一番の拠点を豊かにする人が集まるといいなと思って始めました。5/4に緊急事態宣言を5月末まで延長するんじゃないかという報道が流れていましたが、家について改めてこのタイミングで考えることから始めたいと思います。

 

まずは、世田谷区で住む人と共に育む賃貸住宅やオープンな福祉施設「タガヤセ大蔵」、都市農園などを運営する安藤さんが口を開きました。安藤さんは、「今までハンデだったものが武器になっている」と感じるようです。

 

安藤さん
世田谷区の立地の悪いところで賃貸住宅を運営していますが、今の状況の中でうちの住人たちは、のんびりと優しく暮らしています。緑の多い場所なので、駅からの立地が悪いことが、今、果たしてマイナスなのかという感覚があります。むしろこれからはプラスなんじゃないかな。

 

住宅街の駅前はかえって人が集まってしまっている地域もあるので、三密を避ける必要がある今、駅から離れていることが、むしろ利点になるのは新しい発見でした。

東京都大田区で代々不動産業を行う茨田さんが、京急電鉄と高架下活用の事業として運営するカフェ「仙六屋」は、リモートワークになったお客様でお店が混みすぎて、しばらく休業の判断をしたそうです。

 

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福田屋というモナカ屋さんの事業を受け継いで、茨田さんが始めたカフェ仙六屋

 

茨田さん
家じゃ仕事できないっていう声が多くて、結局、カフェに来て仕事しているという状況があり、複雑でした。働く場所としての機能というとドライな感じがするけど、家もそういった部分を含んで考えざるをえないのかなと感じてはいます。

 

都内の賃貸住宅は、ほとんど外にいることで成り立っているような、小さな部屋や機能、内装で十分でした。でも、それではstay homeし続けるのは難しいため、住まいづくりや家の中の環境づくりについても考えていく必要がありそうです。

DIYによって愛着ある家や場所をつくる活動をしているHandiHouse projectの加藤さんは、暮らす人自らが住まいづくりをできるようにDIYのオンラインサポートを新しく始めました。また、ワンルームでも充実した暮らしを感じられるDIY型賃貸住宅「アパートキタノ」の運営にも携わっています。今年3月にほぼ満室になったアパートキタノにどんな住人が集うのか教えていただきました。

 

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アパートキタノの様子

 

加藤さん
アパートキタノは、新宿駅から45分の京王線北野駅からさらに徒歩10分くらい坂をあがった場所なので、立地は恵まれているとは言えない。既存のワンルームに合板を壁と床に貼って、2面だけDIY可にしています。

全部で47部屋があるうち15部屋がDIY型で、この3月に新しい住人さんが13名、バズったTwitterを見て入居しました。

住人さんがちょうど引っ越すタイミングで「この部屋を引き継いで欲しいです」って発信したら、めちゃくちゃ拡散して。3ヶ月の間に問い合わせが50件、内覧が30件くらいありました。基本的には皆、暮らしが好きで良い感じに住みたいって人が多いんで、誰でも住みたくなるような内装にしてくれるんですよね。下地をきちんと用意してあげれば、それをフックにしていろいろな人が住みたいと思ってくれるっていうのは僕も発見でしたね。DIYによって価値が上がっていくような。

 

賃貸住宅の市場において、新築の時を0とすると、人が住んだら汚れてマイナスになり、また0に戻すという視点が当たり前でした。でも、アパートキタノの住人のように暮らしに対して前向きな人は、むしろプラスの価値を生み出してくれるようです。

 

 

原点回帰のリアルコミュニティが価値となる

 

大家の学校の卒業生であり、千葉県館山市で3物件の大家を務める漆原さんは、自身が運営する元公務員宿舎を改装した賃貸住宅「ミナトバラックス」のコミュニティスペースからご登壇いただきました。

 

漆原さん
今いるコミュニティスペースは、去年の台風の夜、停電になって皆で集まった場所。今のコロナ渦の状況よりも、台風後の状況の方がきつかったので、予行演習ができていたと思います。

 

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台風の時にミナトバラックスの住人が集まった様子

 

以前と、台風被害後や現在を比較すると、顔を合わせて挨拶をしたり、住人たちで畑をつくったりするような些細なことで笑顔になる人が増えたと話す漆原さん。

 

東日本大震災で甚大な被害を受けた石巻市に、震災後移住をして資産価値の下がった空き家を買い上げ、11物件の賃貸経営をしている渡邊さんは、「リアルコミュニティの価値」について話します。

 

渡邊さん
石巻は震災の時、携帯が通じなくなっちゃった中でやりとりしてきたので、リアルコミュニティに重きを置いているんじゃないかなと思います。

田舎の社会資本とか自然資本って、これから先の見えない時代ですごく価値が見直されていくだろうなって思いますし、そういうシェアハウスとか共同生活をしている中での徒歩圏内で顔の見える人同士のコミュニティがある強さは見直されていくだろうなと思います。

 

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リアルコミュニティである下宿屋「山田荘」を京都で運営する山田さんが続けて話します。6人の住人が2階に、山田さんと70歳のお母さんは1階に住んでいて、玄関は一つ。距離が近いことの悩みもあるそうです。

 

山田さん
私、ルールを決めるのが凄いしんどいんですよ。でも、住人の皆さん好きに動いてはるので、自己管理意識がそれぞれ違うと、とても不安になるんです。母親の命があるなって思ったら、協力のお願いをしないと下宿屋ができひんなって思ったんです。

家賃も手渡しでやって来たんですけど、今は昼を「ドミノピザコース」、夜を「鶴の恩返しコース」って言ってやっています。ドミノピザコースは、階段の下に交換代を置いて、距離をとって受け渡しています。鶴の恩返しコースは、障子を挟んで、わざわざ電気を全部消して灯篭の光で私を照らして、お家賃を預かるみたいな。障子越しに、こそこそと「最近どう?」という話をしてますね。

やっぱりシビアになってくるんですよ、上と下の関係性が。シビアにならへんように、おもろいように、交換代をつくってみたり、交換日記したりしてるんです。

 

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左:ドミノピザコース、右:鶴の恩返しコース

 

山田さんの話を受けて、青木さんは「意外とこういう原点を掘り返してみると、できることはまだまだある気がする」と話します。withコロナやafterコロナという言葉がインターネット上では飛び交い、劇的に世界が変わるかもしれないという仮説もありますが、これまでになかった状態に劇的に変わることばかりではなく、原点回帰することも出てくるのかもしれません。

 

それでは、「これまで」を見たときに「これから」の住まいや暮らし方はどうなっていくのでしょうか?

続きは、後半のイベントレポートでまとめていきます。お楽しみに。

 

 

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パネリストの渡邊享子さんを始め、前線で場づくり・まちづくりに取り組む方々が講師です。

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【5月10日の開校式は、受講生以外も参加可能】

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